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📖 書籍学習: COMMON STOCKS AND UNCOMMON PROFITS

著者: Philip Fisher | ジャンル: Finance

はじめに

数字よりも「事業そのもの」を見ようとする本です。株式投資という題材を通じて、長期的な価値をどう見抜き、どう待つかという思考様式が静かに立ち上がってきます。

1. 背景と主要な思想

『Common Stocks and Uncommon Profits』が書かれたのは、まだ「割安株」や短期の値動きに注目が集まりがちだった時代です。市場では、財務指標の低さや一時的な不人気を理由に株を買う「バリュー投資」が主流で、企業の将来性や質的な優位性を体系的に評価する視点は十分に整っていませんでした。

フィッシャーが直面していたのは、「数字だけを見ても、本当に優れた企業は見えない」という実務上の行き詰まりでした。決算書上は平凡でも、技術力や組織文化、経営陣の質によって長期的に大きく伸びていく企業がある一方で、数字は良くても持続性に欠ける企業もある。従来の分析では、この差を十分に説明できなかったのです。

そこで彼が挑戦したのは、「株式は紙切れではなく、事業の部分所有権である」という当たり前の事実を、徹底的に最後まで考え抜くことでした。単に「安く買う」から「本当に偉大な事業に長期で乗る」へと、投資の中心思想をずらそうとしたのがこの本です。

2. 核心的な概念と思考の枠組み

フィッシャーの思考は、「数量」から「質」への移行として理解すると分かりやすくなります。彼は、企業を評価するうえで決算データを否定しませんが、それだけでは「なぜ伸び続けるのか」を説明できないと考えました。そのギャップを埋めるために、彼が重視したのが「現場に近づき、人に聞く」というスカットルバット(風聞・聞き込み)というアプローチです。

この聞き込みは、単なる噂集めではありません。顧客、競合、仕入先、元従業員など、企業を取り巻くステークホルダーから断片的な情報を集め、それを統合して「この会社はなぜ強いのか/弱いのか」を立体的に把握していきます。ここで焦点となるのは、技術開発への本気度、経営陣の誠実さと器、社員が率直にものを言える文化、事業機会を拡大するための長期的な構想など、定量化しにくい要素です。

また彼は、「優れた企業を見つけたら、頻繁に売買せず、非常に長く持ち続ける」という姿勢を強調します。短期の価格変動ではなく、長期の事業価値の成長に賭ける。そのためには、最初の選択において相当の厳密さと洞察が求められます。「いつ買うか」よりも、「何を持ち続けるに値するか」を問う発想です。

さらに、リスクを「価格の変動」ではなく「事業の本質的な劣化」として捉え直している点も重要です。株価が下がることよりも、競争優位が失われること、経営の質が落ちることこそが真のリスクだとし、それを見抜く観察眼を磨くことに力点を置きます。

3. 実践的な意義と影響

プロダクトマネージャーの視点から読むと、この本は「プロダクトや企業を、時間軸を伸ばしてどう評価するか」の訓練として機能します。四半期ごとの指標や短期のKPIに追われるなかで、フィッシャーは「10年後にこの事業はどういう姿で勝っているのか」という問いを執拗に投げかけてきます。

たとえば、彼が重視するのは「継続的な研究開発」「市場の拡張余地」「組織が学習し続ける仕組み」といった、PMが日々悩むテーマそのものです。財務的成功の背後にある構造条件を見ようとする姿勢は、プロダクトの成功要因を機能単位ではなく事業システム全体として捉える感覚に近いものがあります。

また、「外側からの聞き込み」を通じて企業を理解するという発想は、ユーザーインタビューや競合リサーチの姿勢とも重なります。社内資料だけではなく、外部の声を統合して本質を掴むという態度は、投資家だけでなくPMにもそのまま応用可能です。

4. 考察の視点

今日のテック産業やスタートアップ環境では、短期のグロース指標や資金調達ニュースが過度に注目されがちです。そのなかで、フィッシャーの「本当に偉大な企業は、ゆっくりと、しかし着実に築かれる」という視点は、時間感覚を調整するための良いアンカーになります。

また、この本は「不完全な情報のなかで、どう長期判断を下すか」という認知的な課題に対する一つの解法を提示しています。完全なデータは決して揃わない前提で、定性情報を丹念に集め、矛盾を吟味し、仮説を更新しながら決断していく。その過程自体が、PMの意思決定プロセスとよく似ています。

古さを感じる具体例は多い一方で、「質的な優位性をどう見抜くか」「経営と文化をどう評価するか」という問いは、むしろ現代ほど切実です。AIやソフトウェアの世界では、無形資産が価値の中心になっており、フィッシャーが重視した「目に見えない強さ」を見る力は、ますます重要になっています。

5. 残されたメッセージと問い

この本の精神を象徴するのは、「最大の利益は、最も優れた企業を長く持ち続けることから生まれる。頻繁な売買からではない」という趣旨のメッセージです。時間を味方につけるには、何を持つかより前に、「何を信じて持ち続けるのか」を自分の中で明確にしておく必要があります。

問いとして残したいのはこれです。

あなたが今、時間とエネルギーを投じているプロダクトや組織は、「10年後も持ち続けたい」と思えるだけの質的な強さを、本当に備え始めているでしょうか。もしそうでないなら、どこからその強さを設計し直しますか。

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